1人が本棚に入れています
本棚に追加
「おやすみー」
そう言うと俺はベッドに潜り込んだ。今日も残業で疲れた。今日はよく眠れそうだ。
ところがそうはならなかった。眠れないのだ。何かが頭の中でモヤモヤしていた。
なんだろう。この釈然としない気持ちは。何かが引っかかって取れないもどかしさは。
わかったぞ。さっきの「おやすみー」だ。俺は独身で一人暮らしなのだ。いったい誰に向けて言ったのだろう。目の前にある首の曲がった扇風機か。それとも部屋の隅にある埃被ったギターか。はたまた自分自身に対してか。
なんだか余計にモヤモヤしてきた。俺はこう見えて神経質なのだ。
俺は気晴らしにテレビを付けた。
夜のニュース番組だった。
ぼんやり見ていると、臨時ニュースが飛び込んできた。
「臨時ニュースです。地球二個分の超巨大隕石が、超高速で地球へ接近中との事です。地球はすぐに粉々に……」
なるほど。そういうことだったのか。俺は地球上に生きとし生けるもの全てに対して「おやすみー」と言ったのだ。
やれやれ。スッキリした。
今日はよく眠れそうだ。
最初のコメントを投稿しよう!