第二ボタン(竹田side)

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 もしも時間が巻き戻せたら…。  俺はあの時、あいつになんて言えば良かったんだろ。  もっとあの時に、ちゃんと悟と向き合って真面目に話をするんだった。  もっと自分に素直になるんだった。  もしも時間が戻るなら…。  こんな風に気持ちがすれ違う前に、この時ちゃんと気持ちを伝えておけば…。 * 「先輩、それ、俺にくれよ。」  俺と笹木さんの間に割り込んできた悟がムスッとした顔で俺にそう言った。 「は?なに言ってんだよ。何の冗談?見てわかんネェの?俺今、取り込み中なんだけど…」  自分の制服のボタンに手を掛け引きちぎる。目の前でうつむく笹木さんの手のひらにそっと握らせた。 「ほら。」 「いいの?」 「いいよ。」  悟が見てる目の前でボタンを笹木さんに握らせた。 「ほら、悟はアッチ行ってろって。今いいとこなんだから…、邪魔すんな」  不貞腐れてる悟に手で払うようにして笑いながらふざけてそう言った。   だって悟の後ろに立ってる薫ちゃんの顔がすごく不安で今にも泣き出しそうだったから。  後ろ向きのまま、無表情で静かに悟が一歩後退りした。  __いいんだ、これで…。そのまま行けよ。その薫ちゃんと…。 「ずっと好きだった。竹田くんのこと…」  悟に構わず笹木さんが言葉を続ける。 「俺も好きだよン。笹木さん、めっちゃいい人だし。」  頭を掻きながらケラケラと笑いつつ悟の前でそう言った。  後ろに立ってる薫ちゃんが心配そうに悟の顔を見てる。  悟はその子と幸せになれ…。  俺は笹木さんのこの気持ちをありがたく受け入れることにする…。  お互いに『正しい道』を進んでいこう。どうせ俺と悟がくっついたって、お前を幸せにはしてやれないんだし…。不幸な女の子が二人増えるだけだ。  __ごめんな。悟…。  悟が唇をかんで下を向いた。そしてクルッと背中を向けると早足でどこかに去っていった。必死に追いかける薫ちゃんを目で追う。  大丈夫だ。悟はあの子ときっと幸せになれる。俺なんかいなくたって。
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