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Ⅲ
なんだ……アツヤのやつ、大切に思っていてくれたんだ。
私は疑っていた気持ちを恥ずかしく感じた。どうして信じてあげられなかったのだろう。大好きな彼氏のことを。
確かに最近そっけない態度が増えていたし、何やらスマホをこそこそいじっている時間が増えていた。しかしそのスマホを使う度に『210723』という思い出の数字が入力されていたならば、そんなに杞憂することではなかったのだ。
――その時、アツヤのスマホにLINEの通知が来た。
相手の名前が表示されたが、どう見ても女の名前だった。
私はまじまじと確認するよりも先に、慌ててポップアップしてきた通知をタップして、その相手とのLINE画面を開いた。
私はそこで、スマホを落としそうになるほど衝撃的なメッセージのやり取りを目にしたのだ。
『アツヤ大好き』
『今度はいつ会えるかな』
『また泊まりに来てね』
『次はハンバーグ作るよ』
……はあ?
誰だよこいつ、何彼女みたいなやりとりしてんだよ。
まさか私の知っているヤツじゃないだろうな、誰だ?
相手の名前は「新尾夏海」と表示されている。
知らんな。誰だ?
なんて読むのだろう、アラオ? ニイオ? 夏海は……ナツミかな。
ん……?
え、待って。
もし「ニイオナツミ」だとしたら。
それってまさか『210723』ってこと?
私達にとって大切な日だったはずの数字が、アツヤにとっては、どこかの泥棒猫によって上書きされた数字になっていということだろうか。
まあ、ね?
真偽の程は分からないしね?
これはアツヤが風呂から出てきたら、しっかりと問い詰めてやらないといけないらしい。
なんにせよ、最低だ。本当に。
■おわり■
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