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面接の際、好きな時に休憩をとってくれて良いと言われたが、実際は休んでいる暇などない。午前十時から午後三時までの勤務となってはいるが、清掃が終わらなければ三時を過ぎても帰れないし、逆に早く終われば三時を待たずして帰っても良いとされている。けれど、結子の仕事が三時前に終わったことなど一度もない。
一日に任される数は大体十五から十七部屋。単純計算で一部屋二十分で仕上げれば、三時までに十五部屋の清掃が完了することになるが、そんなにうまくはいかないものである。だから、いつも結子の終了時間は三時を超過する。
それでも今まで一日八時間、多大なストレスにさらされながらの会社勤めをしていたことを考えると、一日五時間から六時間を誰とも言葉を交わさず、自分のペースで黙々とこなすことのできる客室清掃のほうがずっとずっといいと結子は思う。
ただ、あまりにも人と会わなすぎて、誰とも言葉を交わさなすぎて、ひとりでシンと静まり返ったフロアで仕事をしていると、この世で自分ひとりしかいないのではないかという孤独感に襲われることがある。そんな時、結子はパソコンを見るようにしている。各階のパントリーにはパソコンが設置してあり、清掃状況が一覧で確認できるようになっている。オレンジは清掃可、赤は清掃中、黄緑は清掃済み。各階の担当が仕事の状況に合わせ、部屋の色を変更するのだ。
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