第3王子の事情

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第3王子の事情

ジークさまに案内された先で、私は驚愕していた。 「この薬草っ!質が悪すぎじゃないですか!」 私だって師匠に鍛えられた冒険者だもの。採集する薬草のことくらいはわかる。 もちろんレナンもだ。 「これは一体どう言う事でしょうか」 王族に使われる薬草がこんな……。しかも第3王子殿下の症状は稀有なもので、そしてちゃんとした治療や薬草が必要なはずである。 「恐らく王妃の手の者の仕業だ」 ジークさまが怒りを滲ませながら告げる。 まさかこんなことまでやってくるなんて。 「病人まで苦しめるだなんて、ほんっとあの王妃は……っ」 ほんと、ひとの心がないのかしら……?それとも権力をもぎ取るのに必死になると、ひとは変わってしまうのか。 まぁ、それが冒険者たちがお貴族嫌悪を起こすひとつの理由だが……そうではない貴族も……お父さまやショコラたちがいるから、私は貴族であることを恥じずに済んだ。 そして叶うことならば、貴族としても、王子妃としても、正しい存在でありたい。じゃなきゃ冒険者の私に怒られてしまう。 「マティアス王太子殿下への妨害も兼ねているのだろう」 マティアス殿下……!その方こそ第3王子殿下の実の兄君で、本物の第1王子殿下であり王太子殿下だ。 「あの王妃やバカ王子が、完璧なマティアス殿下に手を出せないからこそ弟殿下のフィーを狙ったのだろうな」 「そんな……っ!」 だからって病人に必要不可欠なお薬に手を出すなんて。だけどそれが王室の避けられないどろどろした部分なのだろうか。 しかしながら、そんなことをしたって、あのバカ王子ヴィクトリオがマティアス王太子殿下にかなうはずないじゃない!でも、それをやるのがあのバカ王子と親バカ王妃なのだ。 「しかし……王宮の薬師までが王妃の言いなりか」 ジークさまが肩を落とす。 「あの、国王陛下は何もしてくださらないのでしょうか」 「そんなことはないと、信じている。俺もフィーもだ。恐らくこの件も後にマティアス王太子殿下の耳に入るだろう。……であれば、マティアス王太子殿下が何とかするはずだ」 「それまで待たなきゃならないと言うことですか?」 「フィーはマティアス王太子殿下を信じている」 だからひとり、この離宮でじっと耐えている。兄王子が、王位を継承するまで。 そんなの、悔しすぎるでしょ……! そしてジークさまと再び第3王子殿下の元を訪れれば、第3王子殿下がゆっくりと身体を起こし、ジークさまがすかさず支える。 「……殿下」 「キアラ」 「は……はい」 衝撃の真実を知ってしまった以上、何だか気まずいわ。第3王子殿下に無理はして欲しくない。けれどそれは、兄君マティアス王太子殿下のためでもある。 「殿下ではなくフィーと呼んでくれないか」 「……っ!」 第3王子殿下の愛称!? さすがに断る……理由なんてないわよね。せめて私も、この方のために何か助けになりたいと思ってしまった。 「分かりました。フィーさま。私もキアとお呼びください」 ヴィクトリオに呼ばれるのは癪だが、フィーには呼んで欲しいと、心から思えたのだ。 「分かった。キア。あと敬語もさま付けもなし」 「……ですけど」 「キアは私の妃となる。敬語はいらない」 「分かりまし……分かったわ、フィー」 「その方がキアらしい」 そう言ってフィーは微笑んでくれた。 「それにしても、薬草はどうしようか」 ジークさまが顎に手を当てる。 「なら、私が採ってきますよ。とれたてほやほや。しっかりと目利きもできます」 これでも冒険者。それくらいは朝飯前なのだ。 「キアが私のために、わざわざ……っ!」 フィーの顔が輝く。 「なんだか……嬉しいな」 「……っ!」 微笑みが、う……美しすぎるっ!! 何この儚げ美形王子殿下!! 「が、がんばってくるね!!」 俄然やる気が出てしまう。 「でも、気を付けて」 「うん。レナンも一緒だから大丈夫」 「キア姉のことはお任せください。殿下」 レナンも頷く。 「レナンもフィーでいいよ」 「ではフィーさま。行ってまいります」 そうレナンが答えるとフィーも優し気な微笑みを返した。 よし、頑張らねばっ!!
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