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薄暗い部屋の中。ろうそくの明かりだけを頼りに、少女たちは顔を突き合わせていた。
「じゃあ。聖女様にも、王女様にも、魔王の妃になる意思はないんですね?」
「その通りよ、ロエッタさん」
金髪の少女が扇で口元を覆う。王女として生まれ、順当にいけば王の座へ着く、まこと高貴な血筋である。
「私は唯一、現王の血を引く王女なのよ。国のためにも魔王との婚姻を果たすわけにはいかないわ。ここに来たのは、あくまでも、王国に魔王がかけると言う呪いを回避するためだもの」
彼女の隣に座る空色の髪の少女が、続いて頷いた。
「わたくしも同じです。何故、純潔を失えば結界を維持する力を失する聖女が、進んで魔王の褥にあがらねばならないのでしょう? 私が結界を張れなくなれば、モンスターが国へ入りこんでしまいます。民を危機にさらすわけにはまいりません。いざというときには、わたくしが刺し違えてでも魔王を討伐いたします」
大地の女神からの啓示を受けた聖女は、勇ましく宣言した。生まれがら聖女として王都の神殿で成長した彼女は、王女との付き合いは長い。2人は同世代の責務を負う者として、切磋琢磨してきた過去がある。
そんな2人の少女は、黙り込んでしまった黒髪の娘……ロエッタを見つめた。
黒髪の娘、ロエッタ。彼女は辺境の小さな村に生まれた、ただの村娘だ。
3人は世界を支配しようとするおぞましき魔王・レガスの命令により、妃候補として集められた。王女と聖女という立場から見ると自分たちを呼んだのは分からなくもないが、ロエッタについては意図が分からない。
王女と聖女は、ロエッタを気づかわしそうに見る。
「……ですが。王族として、民を守るのも務めですわ。ロエッタさんが心に決めた方がいるならおっしゃって」
「そうですね……わたくしも、聖女として、もし他のどなたよりもわたくしを選ぶのであれば、魔王の贄となりましょう」
2人が心配そうに言う。
すると、ロエッタの目から美しい雫が零れ落ちた。大慌ての二人に対し、ロエッタは急いで首を横に振る。
「ぐすっ……ごめんなさい。私、てっきり、お2人がレガスのお妃様になりたいんだ。私にはチャンスなんてないんだって、思って、あきらめようと思っていたんです……」
部屋に沈黙が満ちる。王女と聖女は、顔を見合わせた。
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