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七月四日、この日はアメリカ合衆国の独立記念日。世間は祝賀ムード一色でパレードや花火、家族や友人で集まりホームパーティを開いたり等のアメリカ最大の祝日の賑やかさをみせている。
イリノイ州シカゴで家族と暮らす20歳、大学三年生のネイト・ハドソンもそんな祝日の最中にいた。この日は結婚して家を出たネイトの姉のアデルと夫のライアン・ロバーツを招いて、ハドソン家の庭でバーベキューを楽しんでいた。
28歳のアデルと30歳のライアンは大学時代の友人で二年前に再会しそこから交際、結婚に至った。彼女は友人のサンドラ・ミラーという女性と共同でシカゴ市内でカフェを経営している。そしてライアンはシカゴ大学で講師をしている。因みにネイトはシカゴ大学に通っており、ライアンの事は知っていた···と言っても講義を受けたくらいのことだが。
ライアン・ロバーツは190cmの長身でヘーゼル色の瞳にブラウンの髪、とても端正な顔立ちをしておりネイトは大学の講義で初めて彼を見た時から好意を抱いていたのだ···しかしまさかその一年後に自分の義理の兄になるとは思いもよらない出来事だったーーーー
姉のアデルと弟のネイトは小さい頃から対照的でアデルは活発で明るく社交的な性格、ネイトはどちらかというと内向的でクールな性格だ。思春期に自分の恋愛対象が男性だと分かったが未だに家族にはカミングアウトしていない。
ネイト・ハドソンは身長178cm、グリーンの瞳に耳に掛かるくらいの少し長いダークブラウンの髪をしており、どこか中性的な雰囲気を感じる。今でこそないが、幼少期はよく周りから姉妹だと間違われていた。
「元気だったかい? ライアン君」
ネイトとアデルの父親であり、ライアンにとっては義父のスティーブ・ハドソンは缶ビールを片手にバーベキューコンロで肉や野菜を焼きながら笑顔で聞いてきた。
「はい、お陰様で。アデルとも仲良くやっています」
「僕はライアンさんとはしょっちゅう会ってるけどね」
ネイトは会話に割り込むように間に入ってきた。彼の言う会っているとは数日に一度はライアンの講義を受けているし、アデルと結婚してからは構内でたまに話したりしている。
「ネイト、お前も九月には四年生になるからそろそろ自分の将来のことも考えるんだぞ」
「分かってるよ···今言わなくてもいいだろ」
彼は少し不貞腐れた。
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