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三回目のノック
トイレの花子さん……誰もが知る、言わずと知れた最も有名な〝学校の怪談〟であるが、わたしの通っている小学校にもその亜種的な怪談が伝わっていた。
〝亜種〟というのは、一般的に知られているものとは少しその扱い方が異なるからだ。
そもそも〝トイレの花子さん〟自体、全国的に様々なバリエーションで語られている怪談であるが、よく知られているところでは、女子トイレの三番目の個室の戸をノックして、「花子さん、遊びましょ」などと声をかけると、おかっぱ頭の少女の霊が現れる…といった感じのものである。
そして、その話を聞いた子供達はほぼ確実に、その話が本当かどうか? 実際に現場のトイレを訪れて確かめてみようとするのである。
うちの学校に伝わっている話もほぼ一般的なそれと変わりはなかったし、やはり女子達は二、三人の友達グループで確かめに行ったりしていたのだが、わたし達の場合、三回ノックするところを実際は二回だけ叩き、三回目は叩くフリをするだけという寸止めが暗黙のルールとなっていた。
なぜならば、三回ノックすると確実に花子さんが現れ、向こうの世界は引きずり込まれると言われていたからだ。
一般的に花子さんを呼び出した後については明確に語られていないことの方が多いが、わたしのところでは呼び出した段階でもうすでにバッドエンド確定だ。
なので、ギリギリ三回目はノックするフリをしてそのスリルを味わう、一種、チキンレースのようなゲームとして〝トイレの花子さん〟は楽しまれていたのである。
かく言うわたしもけっこうな怪談やオカルト好きだったので、ご多分に漏れずこの〝花子さんゲーム〟をチャレンジしに行った。
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