亀の恩返し

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もう一回、亀を助けたいと思った。 だけど都合よく、小学生が亀をいじめてる所に遭遇できるとは思えない。 仕方ないから、私は砂浜で穴を掘った。 人間が落ちたら危ないから、ちょうど亀が出られないくらいの深さに。 ペットショップで買っておいた亀の餌を、穴の底にそっと置いた。 薄いシートで穴を覆って、上から砂を被せてカモフラージュした。 亀は見事に落とし穴に落ちて、かえって私はびっくりした。 こんなに上手くいくことって、あるんだ。 「お礼は竜宮城がいいな。良い所だったし」 亀を助けた後に私が言ったら、亀はまた竜宮城に連れて行ってくれた。 鯛やヒラメの舞い踊りを見て、ご馳走様を食べた。 帰りたいって言ったら、手土産を持たせてくれようとした。 また玉手箱を渡されそうになったから、また断った。 「前と同じのが良いんだけど。ほら、あの薬」 と私が言ったら、今度は鯛が首を振った。 「あの薬はもうダメなんです」 鯛の説明によると、あの薬は飲むと体の中に抗体が出来る。 一度目はお付き合いが上手くいかなくても何もないけど、二度目に別れてしまったら、今度は海の中でしか暮らせない体になってしまう。 そういえば理科で抗体について習った時、スズメバチに刺されたら抗体が出来て、2回目に刺されたら死ぬって先生が言ってたのを思い出した。 抗体ができるって、そんな感じ? ママに昔、人魚姫の絵本を読んでもらったことがあるけど、王子様との恋が成就しなかったら、人魚姫は海の泡になってしまうって話だった。 今回のは泡にされるまでいかないけど、恋愛に失敗したら海がらみのペナルティがあるから、人魚姫みたいな感じって思ったらいい? ノリさんとのお付き合い、今度はうまくやれるって思った。 もう以前の私じゃない。 幼馴染に色々と教えてもらったし、ノリさんがどんな人か今は知ってる。 もう一回お付き合いできたら、今度は別れない自信がある。 「それでも良い。薬をちょうだい」 私は鯛に言った。 ノリさんが好き。 別れたままなんてイヤ。 うまくいかなかった時のことなんて、考えない!
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