亀の恩返し

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ノリさんと私はまた付き合うことになった。 カフェで私がそっと口に含んだカプセルを飲み込んだ直後、ノリさんから「別れたことを後悔してた」って言われた。 離れてみて、私への気持ちを再確認したんだって。 この薬、マジで何で出来てるんだ?って思った。 それから私は気をつけた。 めっちゃ細心の注意を払った。 ワガママ言わないように。 私の考えを押し付けてしまわないように。 とにかくノリさんにとって、楽しい時間になるように。 ある時ノリさんが私のことを褒めてくれて、私の頭を撫でて髪をクシャクシャにした。 私はノリさんに褒められて誇らしかったし、頭を撫でられるのもノリさんだから嬉しかった。 髪がクシャクシャになるのも全然イヤじゃなかった。 だけどノリさんが 「髪をクシャクシャにされるの、嫌がる子もいるけど、ナルちゃんはむしろ嬉しそうだね」 って言って、それを聞いたら胸がザワっとした。 嫌がる子もいるって知ってる行動を、何で私にやるの? これを言ったら、私が髪をクシャクシャにされたことを怒ってると思われそうで、言えなかった。 だって私は髪がクシャクシャになるのは構わないから、誤解されたくない。 何よりも、ノリさんに(ナルちゃんに責められてる)って思われるのが怖かった。 この出来事がキッカケで、それからちょっとしたことがある度に、自分がいっぱい我慢をしてることに、私は気づいてしまった。 言いたいことがあっても、私は伝えられない。 また別れを切り出されるのが怖い。 一度、別れを経験したことは、私にとってえげつない脅しになってる。 結局しんどくなってしまって、今度は私から別れを切り出した。 幼馴染が教えてくれてたのにな。 「無理は続かない」って。
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