亀の恩返し

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海の底からどうやって帰ってきたのかは覚えてない。 気づいたら、最初に居た浜辺に立ってた。 服が全く濡れてなかったから(夢?)とか思ったけど、ポケットにちゃんと薬ビンが入ってた。 やっぱ本当にあった出来事なんだ! 竜宮城まで行った次の週、ノリさんと一緒にバイトに入る最後の日。 私はお客さんが途切れた隙を狙って 「ノリさんにはお世話になったから、お礼の手紙を書いてきたんです。 後で渡して良いですか?」 ってノリさんに聞いてみた。 「本当?ありがとう」 ってノリさんは言ってくれて、休憩に入る時間を一緒にしてくれた。 帰る時だとバタバタするかもしれないからって 「良かったら、今、手紙を貰うよ」 って言って、休憩室の隅で二人だけになってくれた。 こういうノリさんの気がきく所、好きなんだな。 ノリさんと向かい合ったら、超キンチョーした。 私はわざと小さく咳をして 「あ、先にちょっと薬を飲んでいいですか?」 って言って、ノリさんが返事をする前に、ポケットから薬ビンを取り出した。 あの咳はちょっと、わざとらしかったかなって思うけど、それは私があの咳は演技だって知ってるからそう思うだけで、多分ノリさんにはバレてないはず。 私はノリさんの目をガン見しながら、カプセルを飲み込んだ。 それから手紙を渡したら、ノリさんはニッコリ微笑んで 「ありがとな」 って言ってくれたから、私は怪しくなかったと思う。
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