亀の恩返し

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「そりゃあ、フラれるって」 と幼馴染のアイツは言った。 だけど私には、よく分からない。 「誕生日でも記念日でもないのに、ブランドもののアクセサリーとか服とか、ねだってたんだろ? そりゃあ男からすれば、金ヅルにされてるなって思うって」 私はそんなつもり、なかったのに。 プレゼントをもらえる愛され彼女になりたかっただけで、ノリさんに高いもの買ってもらおうなんて、思ったことなかった。 「元カレ、インドア派だったんだろ? 絶叫マシンが苦手なのに、遊園地デートばっかりはキツいって。 それに、お出かけばっかりじゃ、お金かかるしな」 「別れて欲しい」って言われるまで、ノリさんが休日は家で過ごす派だってことも、乗り物酔いしやすい体質なことも知らなかった。 別れ話の時に言うんじゃなくて、ちゃんと先に言ってくれてたら、私だって考えたのに。 彼氏ができたらやってみたかったことを、叶えただけなのにな。 「僕は家で過ごすのが好きなんです。 エッチなことはしないから、家に来てくださいって言われたら、家に行ってた?」 「行ってないと思う」 「な?先にちゃんと言ってくれてたらって言うけど、先にちゃんとなんて言えないし、言っても変わんないんだよ」 アイツの言う通りなのかな? 「男ってのは女に対して良い顔したいし、願いは叶えてあげたいって思うもんだから、最初は無理をするの。 だけど無理は続かない、その内しんどくなる」 ってアイツは言う。 アイツは男の代表じゃないし、ノリさんじゃない。 だけどやっぱり、ノリさんもアイツが言うように感じてたのかな? 「付き合うってゴールじゃないの、スタートなの。 そこから価値観の擦り合わせをしていかなきゃいけないし、ずっと微調整は必要。 メンテナンスしないで続く関係なんてないよ」 アイツの言葉は刺さり過ぎて、私は痛かった。 付き合えたんだから、あとは楽しい時間を過ごすだけだと思ってた。 2人の楽しいはそれぞれ違うかもしれなくて、チューニングが必要なんて、思ってもみなかった。 先に誰かが教えてくれてたら良かったのに。 もしくは、学校で教えてくれたら良かったのに。 アイツはただの女好きだと思ってたけど、やっぱちゃんと経験を積んでるだけあるんだな。
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