ep4_うちの猫は時たまかわいい。

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「あ、鷹野くん!三毛門くんも。おはよう、今日はよろしくね」 「池井くん、おはよ。こちらこそ」 池井に誘われ楽しみにしていた週末がいよいよやってきた。 連絡のあった待ち合わせ場所に向かえば既に池井一人だけがスマホを弄りにながら立っていて、その元へとすぐに駆け寄る。 「なんか不思議な感じだね、いつも学校でしか会わないから」 「...うん、たしかに。俺今日かなり楽しみにしてきた」 「あはは、ほんと?嬉しいなぁ。俺も鷹野くんとゆっくり話せるの楽しみだったよ」 いつも遠くから眺めているだけだった池井と、今日はこんなにも近くで目を見て話せている。 それは千里にとって感動でしかなくて、見目麗しく物腰の柔らかい池井に思わず頬が緩む。 「池井くんかっけぇ...」 「どこが」 「全部だよ全部」 小さな声で無意識に漏れ出た呟きに、三毛門からはいつものように淡々とした相槌が打たれた。 ◇◇◇ 「え、待って。は?ちょ、」 「...千里大丈夫?ついていけてる?」 「...」 「千里見た目は真面目になったけど頭良くないもんね。しょうがないよ」 「...くっ...」 あれから他のクラスメイトも集まり池井の家へと向かって、いよいよ勉強会とやらが始まった。 勉強会では一人でも詰め込むことのできる暗記系のものではなく、数学の演習問題を中心にみんなでやるらしく、高校にも無理して入った千里にとっては会話ひとつ取っても難易度が高い。 さっきから一体なんの話がされてるんだと、教科書を捲りなんとか公式を見つけ出す作業を必死になってやっていれば、その様子に気づいたらしい三毛門は悪戯な笑みを浮かべて小声で話しかけてくる。 「...いいよ千里、あとで俺が教えてあげるから」 「ミケ大して勉強してないのになんでそんな頭いいんだよ〜...」 「授業聞いてればわかるじゃん」 「...追い討ちかけてくんな」 千里と違い、三毛門は昔から勉強はできた。 逆になんでこれがわからないの?とでも言いたげな表情に、これはもうわかったふりをしてこの場を乗り切るしかないと「勉強会」の意味を成さない考えにたどり着いたところで、今まで友人達と議論を交わしていた池井の視線が千里に向けられる。 「...っ...」 「鷹野くん、大丈夫そ?わかんないとこあったら俺教えるよ」 「え、っと....いや、うん」 「大丈夫大丈夫、今日の勉強会だって勉強するとは言いつつみんなで集まってわちゃわちゃするくらいの軽めのやつだし。とりあえず俺の隣おいで」 できる池井の気遣いにまた感動し、千里は嬉々として腰を上げる。 池井に言われた通りその隣に腰を下ろせば、池井はにこりと優しげな笑みを浮かべて千里の手を引いた。 「はいここ座って〜。じゃあみんなは適当にやっといて。俺鷹野くんと個別に復習するから」 「はいよー。そしたら次これな。三毛門くんの意見も聞かせてよ」 「...うん」 今まで隣にいた千里がいなくなり、三毛門は勉強になど集中できるはずもなく、恨めしげに池井を眺めた。
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