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「...はあ、今日も好きが強まっただけかよ...」
家に帰ってきて、千里は一人項垂れていた。
それもこれも、昔馴染みで掴み所ない、猫らしさ全開の三毛門のせいだ。
数年前からおそらく俺は三毛門の事が好きで、自覚が芽生える前から数えたらそれこそもっと前からになると思う。
高校に上がる前には「池井」という憧れの存在も現れ、その時には三毛門に対するこの気持ちも本当は憧れや友愛のような別の感情だと思えるだろうと楽観的に考えていたが、実際は池井と三毛門に抱く感情が全く別物であると浮き彫りになるだけで、結局はこうも悩まされ続けている。
───...今日はいくらでも撫でていいよ。千里、俺に癒されたいんでしょ。
「...ああくっそ、また無自覚に誑し込みやがって。俺の身にもなれよまじで...」
三毛門の突然のデレはいつものことだ。
普段は必要以上にツンツンして必要以上に言葉を発しないくせに、時たま俺に大胆に甘えてくる。
そして俺は、そんなミケにいつも翻弄されている。
しかしそうなることを俺は望んでいて、ミケを思い切り甘やかして好きにさせて、あわよくば俺のことを好きになってくれないだろうかと淡い期待をしてしまっている。
「...ま、そんなこと普通に考えてありえねぇよなぁ...」
気持ちを伝えたら今まで築いてきた関係性が変わり、三毛門から自分という居場所を奪うことになってしまうことになりかねない。
そう考えればこの想いを三毛門にも伝えることはできないと思えて、千里はまた堂々巡りの「悩み」を抱えながらも、三毛門を想うことをやめられそうにはなかった。
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