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「そういえば今日からだっけ」
「え?...ああ、ばあちゃん達の旅行?そうそう、じいちゃん連れて山梨まで行くって。しかも週末まで帰ってこないの。俺今日から一人暮らし!」
「家が大変なことになりそう」
「は?いや俺結構家事できっかんな。普段からばあちゃん腰痛いっつって俺に色々任せてくるし」
それに自分一人なら洗濯も食事も洗い物も少なく済んで、むしろ楽できるかもしれない。
そう考えれば別に心配なことなどなく、一人じゃ何もできないと思い込んでいるらしい三毛門に自慢げに視線を向けた。
「じゃあ俺んちの家事もやってよ」
「いやなんでだよ、自分でやれ」
「千里は俺の飼い主だから」
「...都合良すぎだろ」
もしも三毛門と一緒に住むなんてことになったら、千里は率先して三毛門の身の回りの世話を引き受けてしまうだろう。
でもそれも悪くない。なんて言ったって、三毛門は何をしていても可愛い。
「...にしても、4限体育はしんどいよなぁ。俺今日そういう気分じゃない」
「サボる?」
「だからサボんないって。ミケもしっかりシュート決めてこいよ」
「うん」
登校して教室に入ってからは、なんだか熱っぽさもあるような気がする。
そこはかとない身体の怠さに嫌気がさすが、普段から授業についていくだけで精一杯なわけだから、早退して周囲からこれ以上遅れを取るわけにもいかない。
「...千里?なんか大丈夫?」
「え?...うん、別に...平気だけど」
「そう?やっぱりいつもより大人しい気がするんだけど」
「んなことねぇって。ほんと大丈夫だから」
柄にもなく心配そうに自分を窺う三毛門をこれ以上心配させまいと笑顔を浮かべて、千里はその髪をぽんぽんと撫でた。
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