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あれから千里はすやすやと眠っていて、普段寝付きが悪い目覚めが悪いと嘆いている姿をよく目にしている分、よほど体調が悪かったんだろうと呆れる。
三毛門は、時折「ミケ...もうギブ...」と謎の寝言を言って魘されている様子の千里にその目元を細めて、布団の隙間から出てしまっている手に腕を伸ばした。
そしてそのまま、指を絡めて優しく手の甲を摩る。
「...俺の夢見て魘されてんじゃねーよ、あほ」
「...んん、ギブ....、」
「俺になにされてんのまじで」
千里のよくわからない姿を見ているとなんだか可笑しくて、どんな形であれ夢にまで出てくるらしい自身の存在感に少しだけ嬉しくなった。
◇◇◇
「...ギブっつってんだろ...!....、...って、あれ...」
三毛門にしつこく四の字固めを決められるという恐怖すぎる夢から醒めた千里は、自分の情けない寝言で意識が覚醒した。
俺今思いっきり叫んでたよな....
恥ずかしすぎる、どんな夢だよと羞恥に震えていれば、明るかったはずの外はもう暗く、部屋の中も電気すら付けられていないことに気付く。
看病するとか言って飽きて帰ったか、と三毛門の気まぐれないつもの様子を思い浮かべるが、すぐに右手にぬくもりを感じて目を凝らす。
「...えっ...、え、なに。え...」
「...」
「なにこれどういう状況?ミケ?寝てんの?」
何故か自分の手は三毛門によって握り込まれているようで、その手に頬を擦り寄せてベッドの脇で眠りについているらしい三毛門に、相変わらずマイペースだなと笑みが溢れる。
しかし暖房もつけず布団も掛けていない今の状況じゃ、さすがの三毛門も体調を崩してしまうかもしれない。
千里が眠っていた間に日も落ちて、それこそ何時間この状態だったのかもわからない。
休息を経たことで千里の体調も日中よりかは幾分もましになっていて、三毛門が寒さに震えないようにと掛けられていた布団を片手で手繰り寄せる。
そしてそのまま、三毛門へと布団を被せた。
「...ほらミケ、俺が数時間かけてあっためた布団だぞ。あったかいだろ」
「...」
「...はー、まじで可愛い。なんなんだ、ミケ最強すぎる」
三毛門が眠っているため今日はすらすらと思いの丈を吐き出せる。
暗闇に慣れてきた目で間近でじっくりと三毛門の寝顔を眺めて、その愛らしさに無意識に頬が緩んだ。
そうこうしていればまた眠気がやってきて、千里は布団に取り込んだ三毛門とともに再び眠りについた。
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