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「...、....暑い...」
千里のそばでその様子を見守りながら気持ちよく眠りについていた三毛門だったが、何故か暑さを感じて目を覚ました。
かばりと起き上がれば暑さの原因になっていたであろう布団がずれ落ちて、一気に冷気が身体を冷やす。
「...千里、一回起きたんだ..」
こんなことをしてくるのはこの場に千里しかいない。
そう思いそのまま千里を眺めていれば、「寒い...」と三毛門とは正反対の言葉を呟いた千里が薄く瞼を開いた。
「...あれ、おはよ...」
「俺に布団掛けないでよ、暑いじゃん」
「猫は寒がりなもんだろ」
「俺猫じゃないもん。ミケだし」
「ああはいはい、そうだね。ミケミケ」
起きかけにいつものやりとりをして、千里は嬉しそうに目を細める。
暗闇でもわかるその笑顔は、おそらく普段から間近で見ている三毛門の中の記憶で補われている。
「てか、俺布団より千里がいい」
「...は?それはどういう...」
「布団暑いから。千里ならちょうどいい」
「...、...」
こんなことを言って、千里は次になんて返すだろうか。
馬鹿なこと言ってんなよ、と笑われるだろうか。
三毛門が内に秘める期待を胸に冗談混じりにそう呟けば、千里は言葉に詰まった様子でごくりと喉を鳴らした。
そして少しの間を置いて、静寂な空間に千里の声が響く。
「...だったらそんなとこいないで、こっち来れば。俺今寒いし、ミケがいてくれたら凍えずに済む」
「...え」
「ミケ、おいで。俺の隣」
「...っ...」
千里は一体、なにを思ってそんなことを言うんだろう。
三毛門はどくりと跳ねる心臓に平静を装って、誘われるようにベッドの端に手を掛けた。
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