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「....あぁ、池井くんだ。今日もかっこいい...」
「どこが。俺ならワンパンでいける」
「ちょ、なに池井くんにワンパンしようとしてんの。つかそんなの俺が絶対許さない」
「...あんなヒョロガリのどこがいいわけ。俺にはあれの魅力がまったくわかんないんだけど」
月曜の朝。
教室の窓から校門を眺めていれば現れる憧れの人の姿は、今日も麗しい。
思いのままに千里はそう呟いてみるが、目の前に座る幼馴染の三毛門は不服そうに眉を顰めて文句を垂れた。
しかしこれもいつものことだ。
「ミケ、なんでわかんないんだよ。あの憂いを帯びた目、優しげな表情、おしとやかな立ち振る舞い...何を取っても完璧でしょ」
「どこが」
「だからそれを今説明してやったんだろうがよ!」
千里と三毛門は小学校からの長い付き合いになる。
元々は千里も吹っ掛けられた喧嘩に明け暮れ、見た目こそ世間一般的にいう「不良」そのものであったが、中学3年の夏に池井と謎の初対面を果たし、そこから「俺もああなりたい」というこれまた謎の思いで更生の道を選んだ。
その結果、今は池井と同じ高校に通えているし、クラスメイト達からも「普通の生徒」として認識されている。
今までの素行を考えたらプラマイややマイナスかもしれないが、自分としてはよく頑張ったと思っている。
「...高校デビュー野郎」
「...あ?...うるさいよ三毛門クン」
「三毛門じゃない。ミケ。」
「ああ、はいはい。ミケね。ミケミケ」
更生したとて、何かと文句を言われたとて、昔から一緒にいる三毛門と連むことをやめる気は毛頭ない。
本人には言わないが、千里にとって三毛門は大事な存在であることに変わりはなかった。
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