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「...てかさ、今更だけど...そもそも元不良ってバレたからって別に今までとそんな変わんなくない?」
「え?」
「だって千里俺以外に特別仲良い奴とかいないじゃん。周囲の千里に対するイメージって目立たない真面目な生徒って感じだけど、高校入って何か問題起こしたわけでもないし、普段から目立ってるわけでもないし、何でそんなにバレるの嫌がってるの」
「...それは、」
ずっと気になっていたことだった。
中3の夏、塾帰りの池井とたまたま出会って不良をやめることにしたという話は聞いていたが、ここまで頑なに真面目なイメージを貫き通す必要はないような気もしている。
だからこそ今このタイミングで三毛門は千里に素直な疑問をぶつけてみたが、千里は少しだけ言い淀むような素振りを見せてから躊躇いがちに口を開いた。
「...池井くんに、強くあることだけが人を守る全てじゃねぇんだなって教えられたっていうのと...」
「うん」
「...俺のせいでミケまで変な奴に絡まれるの、もう気が気じゃなくて...」
「...は?」
予期せぬ言葉に、三毛門は驚かされる。
もし今し方言われたことが本当なのだとしたら、やはり千里は俺のことが好きすぎる。
「...なにその理由、笑える」
「笑えねぇよ馬鹿。俺、まじで後先考えず何であんなやり方にしちゃったんだろうってすげぇ後悔してて。もっと他にミケを守る方法あったはずなのに...。結局ミケのこと巻き込んで危険に晒して、何やってんだよってなったから...」
「...ほんと、千里は俺のことばっかだね」
「そりゃそうだろ、俺にとってミケは...、...いや、なんでもない」
千里は自身の言葉を最後まで言い切ることなく意味深に口を噤む。
そんな健気で実直な千里に、三毛門は堪らず笑みを溢した。
「...はは、そんな俺のこと好きなんだ」
「...別に」
「あぁ、そう。好きじゃないわけ」
「ち、違う。好き。すげぇ好き...」
「...、...ふぅん」
───...好き。
そんな甘い言葉に三毛門は心踊らされて、自分から誘導したとしか言えない「答え」でも、しっかりと噛み締めた。
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