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「あの、鷹野くん...!昼休み少し時間もらえないかな...」
「え、俺?別に大丈夫だけど..」
「ほんと!?よかったぁ〜。あたし2組の岡田です、またお昼に来るからよろしくね!」
「うん、わかった」
三毛門とともに学校へ登校し、いつもどおりの朝をぼんやり過ごしていれば、なんだかそわそわした様子の見知らぬ女子生徒に声を掛けられた。
ちょうど三毛門がトイレで席を立っていた時に言われたものだから、千里は三毛門が戻ってきてすぐにその話を口にする。
「ミケ、聞いて!さっき俺女子から呼び出しくらっちゃった」
「は?誰。ボコられんの?」
「んなわけないだろ。岡田さんだって。昼休みまた来るって言ってた。これって告白かな?」
「俺もついてっていい?」
「なんでだよ。来るな」
浮き足だった様子の千里を三毛門は一瞥し、すぐに目を逸らして手元に視線を落とす。
そしてぽつりと、小さな声で呟いた。
「...千里には俺がいるのに」
「え、なに?」
「別に。てか告られたら付き合うわけ」
「いやそれはないかな。俺いま池井くんに夢中だし」
「...、」
池井に恋愛感情があるかと言われれば別にそう言うわけじゃない。
ただなんとなく憧れはあって、その憧れから同じ高校を目指して追いかけてきてしまうくらいには夢中だ。
しかしそう言葉にすれば、あからさまに三毛門は嫌そうな顔をして眉間に皺を寄せる。
そんな姿を見て、今し方思った池井に対する思い以外にも理由はあるなとぼんやり考える。
「...あと、俺飼い猫の世話で忙しいから。すぐ千里千里〜って寂しがっちゃうから誰かと付き合うとか無理でしょ。俺そんな器用じゃない」
「...は、」
「なんてね。ミケは俺と違って俺にそんな執着ねぇか。ごめんごめん」
やはり今は誰かと付き合ったりするより、三毛門といるほうが優先だ。
本心からそう思っているうちは、自分の気持ちがそっぽを向いたまま他の人とつるむのも難しいだろう。
俺どんだけミケのこと好きなんだよと思いつつ、自分に執着されて可哀想な三毛門へと視線を向ければ、なぜか三毛門は驚いたように目を見開いて固まっていた。
「...え、なに。どした。ごめんて、さっきのまじで冗談だから...」
「冗談じゃないでしょ」
「...へ?」
「千里は俺のだから。俺以外を傍に置いたらぶっ殺す」
「は!?...いやいや、なに!いきなり物騒すぎるだろ、なにがどうなってぶっ殺すに繋がんの。意味わんねぇから」
三毛門もどうやら多少なり、自分に執着はしてくれているらしい。
それでも素直に言葉にする気は毛頭ないようで、その不器用な態度にいつもと同じような愛おしさを見出す。
「ミケはかわいい。俺だけの猫」
「調子乗んな」
「あはは、珍しく照れちゃって。大丈夫だよ、俺みたいなやつと好き好んで連めるタフガイはミケくらいしかいないから」
「別に心配とかしてないし」
「ああはいはい、そうだね」
結局はいつものやりとりに落ち着いて、先程まで告白がどうだの浮ついていた気持ちはどこかに吹き飛んでしまった。
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