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最近、なんだかお母さんに元気がない。何かをずっと考えていて、私が呼んでもなかなか気づかなかったり。なにかがおかしい気がして、不安な気持ちになった。そんな気持ちをどうにかしたくて、お母さんにへん顔を見せて笑わせてみた。お母さんは笑って、へん顔を返してくれたけれど、しばらくするとまた物思いに耽ってしまった。
そんな日が続く中、春休みが来て、お母さんが、おじいちゃんとおばあちゃんのおうちに行こう、と言った。
「お墓参り?」
と聞くと、
「違うわ。お父さんのほうの、おじいちゃんとおばあちゃん」
つまり、お父さんのお父さんとお母さん。お父さんにすら会ったことないのに? 不思議な感じがしたけれど、訪ねてみたら二人ともとても優しかった。私にはもちろん、お母さんにも優しくて、随分痩せたね、無理しないでね、と心配そうに声を掛けていた。
おじいちゃんおばあちゃんと、お母さんと私。4人で暮らし始めてからも、お母さんはやっぱり物思いに耽ることが多くて、私は何回もへん顔をした。お母さんは、あまり笑わなかったけれど、私をぎゅっと抱きしめてくれた。
***
ある日、お母さんがお出かけすると言った。
「いい子にしててね。おじいちゃんとおばあちゃんの言うことを聞いて、お手伝いもして。だいじょうぶよね、もうすぐ小学校に行くおねえちゃんだもんね」
まるで、ずっとのお別れのような言葉。不安な気持ちがまた押し寄せた。返事をする代わりに、へん顔をしてみせた。
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