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①「はじまり」
2025年夏、東南アジアの海に落下した隕石により、日本の太平洋側は全て巨大津波に襲われた。世界はこの日を境に大きく変化した。
隕石の落下は計算されていたので、政府はかなり高めに想定した津波の避難指示を出したが、実際は遥かに予想を超えていた。
ほとんどの国民が被災し、最終的に生き残った国民は人口の4分の1だけだった。
生き残った国民は、政府が「食料不足」の対応策として強制的に避難所で点滴をうたれた後、数年記憶がなくなりバタバタと眠りにおち、全員が目覚めた頃には2030年になっていた。
被災後の国土は、「C」の文字が裏返った三日月形の島だけが残った。
富士山の噴火により、分断された南北の日本の行き来は「セキショ」と呼ばれる箇所を必ず通る必要があり、政府から許可を受けた者しか通過できなかった。
今回の災害による、原発や地上にうち上げられた原子力潜水艦の相次ぐ爆発により、北半球の地上はとても生活のできる場所ではなくなっていた。
残った人々は、政府がだいぶ前からライフラインを含め整備していた地下街で生活していた。
元「日本」だった場所は、国の西側を「イザナキの地」、東側を「イザナミの地」と呼ばれ、首都機能は「イザナキの地」に置かれていた。
国の政治の最高責任者は総理大臣から天皇に替わっており、律令制の頃と同じ「二官八省」と呼ばれる官僚組織が行政を全てを管理していた。
また、眠っている間に脳に埋め込まれたチップで、声に出さなくとも相手に伝えたい事だけテレパシーでの会話が可能となっていた。(思考が漏れるわけではない)
そして和暦はなぜか「昭和」が復活しており、現在は「昭和104年」だった。
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