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⑤「眼帯姿の男」
「おい、聞いたか?」
イザナミの地の公安陰陽師班である藤田(32)は、班の部屋に入って来るなり同僚の三上(30)に尋ねた。
「元々三種の神器はあの被災の時に、3か所別々に保存するのがかえって危険だからって、元皇居跡地下の皇族用の特別地下神殿に、強力な結界を施し守っていたはずだろ?
それが、防犯カメラに誰も映らず突然全部消えたって?」
「俺に聞かれても、それ以上の情報を持っている訳ではないが、朝から”陰陽寮”からの役人が来ているし、今シャレにならない状況なのは間違いないな。」
「イザナキの地からも援軍が向かっているらしい。
あっちの連中がどのくらいの実力なのかは知らんが、このイザナミでは”セカンダリ”の怨霊どもが地上の廃墟になった寺院に封じ込められた”百鬼夜行”の妖怪どもを呼び起こし、”ターシャリ”に進化している。
足枷にならんといいがな。」
奥の班長の大蔵から、こちらに来るよう呼ばれた。
「藤田、三上。もう既に聞いてるかもしれんが、八咫鏡、草薙剣、八尺瓊勾玉のいわゆる”三種の神器”が何者かに持ち去られた。緊急事態の為、”陰陽寮”からシンゲツ様が今来られている。」
班長の隣に、ストライプのスーツに黒い眼帯姿の男が立っていた。
「日頃は妖怪どもの除霊の尽力、感謝している。私は”二官八省”陰陽寮から来たシンゲツだ。
今、大蔵班長から話があったように、三種の神器が消えてしまうというあってはならない緊急事態が発生している。原因は今の所不明だが、あの神器の1つでも代替のきかない代物であるのは承知の通りだ。
援軍としてこちらに向かっている、イザナキの地の陰陽寮のヤシャ殿はこの国で最高クラスの”見聞”の力をもっている。まずは彼のチカラで消えた三種の神器の行方を探す。」
「シンゲツ様、今回のことは被災の際に結界から抜け出した大怨霊”マサカド”に関係性は?」
「それは分からない。とりあえずイザナキの地の援軍を待つ。」
建物内に突然強力な力が吹き込んだ。イザナギの地の援軍が到着し、「失礼する。」という思念の後に部屋に入って来た。
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