さくら

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 またこの夢か、そう思うけど、その夢に甘える。  僕はいつまで学校を卒業できないんだ。  僕は今、教育出版業界で働いている。仕事は楽しい、大変だけどね。  地元も離れて一人で暮らしているが、来週彼女と帰省し、婚約を伝える予定だ。  人生上手くやってる方だと思う。  それなのに、またこの夢だ。  あと一回、あと一回だけ。  また僕は、夢の中で、学校にいる。  理由は様々だ。単位が足りなかっただの、当時出来なかった勉強をやるためだの、単純にあの頃に戻ってだの、ともかく夢のくせして、自分を納得させる理由をつけて、僕はあの頃のように教室にいる。仲間は見知った相手もいれば顔も知らない子どもがいることも多い。だけど僕は、どんな相手でも憶せず、親しげに会話を交わし、何なら異性とも手をつなげている。そんなこと、あの頃は一度も出来なかったのに。  そして、起きて、夢だと気づき、僕はため息を尽きつつも、空虚な満足感を覚えるのだった。
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