さくら

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 その夜、夢を見た。僕は卒業証書をもって、父の前にいた。父は、笑っていた。僕は、その光景を見て、気づいた。この夢が、これで最後だと。父に向かって、初めてきちんと胸を張って言えた。 「卒業しました。やっと卒業できました。」  父は笑っている。 「おめでとう。」  そして、目が覚めた。隣には彼女がいた。僕は一粒涙を流して、彼女の手を握った。眠ったままの彼女はそれでも手を握り返してくれた。  父に言葉を伝えられたあの夜から、私は教室にいる夢を見なくなった。
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