転生して二度目の結婚生活!孤児院育ちの奥様は身分違いの旦那様の凍った心を溶かしたい!

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「また蜘蛛の巣ができてるわ」  ザブっと床拭き用のモップをバケツの水にいれる。黒くなる水。パタパタと蜘蛛の巣を落としていく。昨日、蜘蛛の巣を壊したはずなのに、今日はまた違う所に作ってる。  バケツの水を変えようと井戸に行くと、数名の傭兵がいた。 「また奥様はなにされてるんですか?」 「うちの主はメイドと結婚したらしい」 「アッハハ!違いない!」  私は粗末な服の腕の袖をグッとまくる。調子にのってる人たちに向かって、ビシッと言い放つ。 「旦那様のお役に立ちたい気持ちはあなた方と同じです。さあ!さっさと仕事に戻って。暇なら、シーツを剥がして持ってきてもらおうかしら?洗濯するから集めて欲しいのよ」 『洗濯!?』  そうよと私は腰に手をやる。困惑している傭兵達はどういうことだ?と首を傾げながらも、めんどくさい仕事を言いつけられては嫌だと逃げていく。  私はその背中を見送り、ハッとした。いそがなきゃ!まだまだやりたいことは山積みなのよ!  次はパンを焼きたい。ふかふかでカリッとした焼き立てのパンを作ろう。そして熱々のパンにバターをのせてジュワッと溶かして食べたい。食料庫へ粉を取りに行こう。 「なにをしてるんだ?」  ここにきて、何度目かの同じ質問が背後からされた。振り返ると、無表情の旦那様がいた。  私はニッコリ笑った。 「少しでもアデル様の力になりたいんです」  いつも冷静な彼が一瞬、怯んだように感じた。  お飾りの妻。買われた妻。期間限定妻。  ……だとしても役に立ちたい。いつか別れる終わりの日が来ても。  最前線で必死で戦うアデル様のためになにかできることはないの?傷だらけの彼を見て、そう私は思ってる。  北の魔王、氷の心を持つ者、闇を喰らう者、そう世間では呼ばれる彼に私は嫁いできたのだった。
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