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 翌日、聡子は昼頃に帰ってきた。  部屋着に着替えた聡子がダイニングテーブルに腰を下ろすと、村重も対面に座り、 「この前は悪かった」と頭を下げた。  聡子は束の間黙っていたが「わかりました」と、硬い声で一言だけいった。  まだ聡子との間に微妙な空気が漂っている。どうしたものかと頭を巡らせていると、聡子が口を開いた。 「赤ちゃんも生まれるし、私たちがケンカしててもね」 「そうだな……」 「でも、あなた私に大声で怒鳴ったでしょ? ホテルで一人で考えたんだけど、まさか外でも気に入らないことがあったら怒鳴ったりしてないわよね?」 「いや、それはない」 「だったらいいんだけど、あなたが老害みたいになったら私嫌よ」 「うん、気をつける……」 「それはそうと、鈴木さんの奥様からお礼のお電話いただいたわよ」 「え?」 「昨日一緒に飲んだんでしょ、鈴木さんと」 「ああご一緒した、バッタリお会いして」 「とても楽しかったってご主人が喜んでいたそうよ。そのお礼。なんの話したの? 水彩画のこと?」  村重は鈴木の絵の上達ぶりや、夫婦旅行についてかいつまんで話した。 「それはいいご趣味ねえ。人生山あり谷ありか……私は、少し違うのよね……」 「違う?」  意味をはかりかねて訊き返した。
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