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川に弱いあしあとをのこす
芦川は加賀山では『何か悩んだらたのもしい子がいるその子に頼むといいよ』と都会では劣等生だと言われていたのがうそのようにヒーローとなっている。
都会で習わされたボクシング、運送業、動画制作はどれもやらされたものばかりで高校生になったら誰にも会わない世界に住んでやると決めながら勉強していた。
本当は各地を嫌になったら逃げ場さえあればよかった。芦川はこの日本で仲間内だけで暮らそうとは思わず、かといって海外にもあてはなかったのでたまたま稼げた動画による広告収入で加賀山へ引っ越し、近隣の高校へ進学した。
もちろん長く住むつもりはなかったが都会にも近く、車がなくても暮らせる自然はなかなか見つからなかったので見つけるのに長い時間がかかった。
芦川はボクシングできたえた身体を誰にも見せないよう自宅から少し歩いて見つけた川で動物や植物を攻撃しないように泳いでいた。
川へ飛び込んで水の中に自分のあしあとがあると格闘技なんてやるんじゃなかったと思うくらい芦川は都会でいじめられても決して暴力にたよらず、証拠をとって仕返しをした。
進学した高校ではいじめもなく、高校生は少ないが
『海外の観光名所で迷子になって誘拐されそうになったところをたまたま動画で知った観光名所の歌をうたったら仲間と思われて元の場所へ送ってもらって死なずにすんだ』
と無表情で語る濃ゆい経験の持ち主と友達になってあきることはないことが確定した。
いつかはみんなとはなれて暮らす。
今がこの先も続くだけで成功者の話もいらないから。
川でシャドーボクシングをしたり、慎重に泳いだりしていると一人の女子高生が去っていくのが見えた。
前にも彼女はここに来た気がする。
たしか三人ぐらいの友達とこの加賀山から帰る時に何度か見かけた。
恋なのだろうか。
昔、山より海派だった頃もそんな恋をしたことがあった気がした。
あれからもうそういう経験はしないと決めてしまっていたがそれもやめよう。
翌日、芦川は川遊びをしている所を見に来た女子高生に再び会って話をした。
「こんな筋肉しててごめんな」
女子高生の顔は赤く、海で焼けて山にある川で遊ぶ男子高校生と何気ない会話をしてくれたのだった。
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