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4
天に輝く銀色の月、有羽はじっと見つめた。
その月の魔力に身を委ねてゆく。
そっと心に誓いをこめて、有羽はゆっくりと深呼吸をしていた。
夜は深く、春の冷たい風が柔らかな有羽の頬を撫でる。
そんな、静寂な中。
全身の毛が粟立つような気配に、有羽は目を見開く。
「あっ!」
きつい麝香、それが有羽の鼻についた。
何かにからめとられるように、華奢な全身を生ぬるい感触が、ゆっくりと這ってゆく。
有羽は、それを懸命に払おうとした。
だが、なぜか身動き一つできない。
次第に、目がちかちかしてゆき、有羽は強烈な目眩を感じてゆく。
視界が、ぐらりと、大きく揺れた。
有羽の力は、頭の先からいっきに抜け落ちてゆく。
重くなった瞼とともに、有羽はその場へ崩れ落ちたーー。
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