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百花繚乱、ここは吉原
百花繚乱、散るも見事な、吉原遊郭。
「吉原随一の大見世『玉屋』の『雛菊花魁』、お練り〜」
シャンシャンと金棒を鳴らし提灯を提げた男衆のかけ声と共に、引手茶屋が建ち並ぶ大通りを練り歩く絶世の美女に、観衆からは、熱いため息と共に歓声があがる。
鼈甲のかんざしを髪に刺し、絢爛豪華な打掛けを身に纏い、高下駄を履き、淑やかに歩みを進める姿は、そこに居合わせた見物人の魂を奪い、魅了する。
決して触れることの出来ぬ高嶺の華。しかし、気まぐれに贈られる妖艶な視線に、男達は叶わぬ夢を見る。
『一晩……、たった一晩でいい。情を交わす事が出来るなら、死んでもいい』と。
その吉原一と名高い『雛菊花魁』の最後の花魁道中見たさに集まった見物人で、仲見世通りの賑わいは、最高潮に達する。
しかし、花魁道中の主役たる『雛菊花魁』の心は、観衆が賑わえば、賑わうほど沈んでいく。
――――明日、あちきは身請けされる。
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