守護者の石

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☆ 「それにしてもアラシよ、地球とはなんと美しい星なのだろう。何度口にしても足りないほどだよ。 ほら、この海を見てくれよ!ああなんと素晴らしい、美しい」 「そりゃ褒めすぎだよ!でもありがとう」 非常事態から一週間。 すっかりアラシ達と打ち解けたノラムは不定形の体をアラシに似せて変形させ、今日も地球を視察している。 「ノラムさんの星の海はどんな感じなんだい?」 「地球の海とは成分も温度もやや違うな。何よりこんなに広大ではない。君達に感動してもらえるとは思えない。 だがそれでも、私にとってはかけがえのない母星の海さ」 「いやあ、絶対に感動するさ。一生忘れないくらいにね」 二人の勝負はあっという間に終わった。 ノラムの変幻自在の体は幾千幾万の腕となり、驚異の聖剣を生き物の様に操った。最強を自負するに相応しい剣技であった。 しかし、アラシの右腕は魔法の様にノラムの攻撃を全て受け止め、無効化してしまった。 突き付けられた拳に成す術も無いノラムは潔く負けを認め、正々堂々の勝負の後にはお互いを認め合った気高き戦士達の友情が生まれた。 そしてノラムは仲間達を一旦退却させ、一人でしばらく地球に残る事を決めたのだ。 そんな二人の隣で、ズートル博士もその大きな複眼で海を眺めていた。 背中には角質化した硬い緑色の羽根が日差しを弾いて輝いている。 博士はロボットではなく、地球に移住して来た昆虫型宇宙人なのだ。 人類亡き後、残された高性能なロボット達は汚染された地球を長い長い時間をかけて浄化し、生き残っていた動物や植物を手厚く保護、繁殖させた。 そして博士の様に信頼に足ると判断した宇宙人だけを受け入れ、助言を得ながら、人類が成し得なかった平和を手にしたのだ。 「ところで、ズートル博士はトゥカーン星の方ですか?」
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