守護者の石

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博士に問いかけるノラムの肩に、白い海鳥が飛んで来てひらりと停まる。 「おおっ鳥よ、私を仲間にしてくれるのかい? 私は明日から毎晩、お前の夢を見るだろう」 大げさなノラムの様子に、博士も思わず微笑んだ。 「ええ、そうです。私もしばらく故郷に帰っていませんが、何だか懐かしい海が見たくなりましたよ」 「トゥカーン星は温厚な人々が暮らす平和な星と聞いています。いつか訪れてみたいものです」 姿形も生まれた星も全く違う彼等だが、共通する想いがあった。 銀河の果ての果てまで点在する全ての星に住む者達が、互いを恐れず、疑わず、手を取り合えたら良いのに、と。 残念ながら実現は不可能に近い。 異国の鳥が肩に停まる様な者ばかりではない。 特に今の青く輝く地球は、存在するだけで人を惹きつけて止まないうら若き女性の様なもの。 黙って見ているだけでは収まらなくなる者がいる。 その身に纏った極薄のドレスに、野蛮な爪を立てようとする者が必ず現れる。 しかし。 「俺もいつか行ってみたいな、ラノムさんの星へ」 「二人共、いつでも来てくれたまえ。国を挙げて歓迎するよ。実は私はバッグイ星の次の王座に就く事が決まっていてね、これでも王子なのさ」 「ええ!?こんな所で油売ってていいのかい?」 「ははっ、油だって?そんなものいくらでも無料(ただ)で運ばせるぞ?」 しかし、こうして同じ海を見ながら話していると、いつか叶いそうな気がした。 「そうだ。 アラシよ、この地球を支配していた『ヒト』とは、どの様な生物だったんだい?」 ラノムの素朴な疑問。しかしアラシは肩をすくめて首を振ってみせる。 「それがね、知らないのさ。 俺達と似た姿の生き物だったらしいけどね」
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