守護者の石

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「知らないって、そんなはずはないだろう。 君達の産みの親じゃないか」 「ノラム殿……」 ズートル博士が申し訳なさそうに口を挟み、ノラムにだけ伝わる様にテレパシーを送る。 「──なんと。そういう事ですか」 つまり、アラシ達ロボットの間では、ヒトに関する歴史は封印されていたのだ。 かつて地球を支配したヒトは確かに優秀ではあったが、生物としては身も心も弱く、自らの発展と共に進んだ汚染によって滅んでしまった。 やがて来る危機を恐れる声は当然多く、何度も議論は繰り返されたが、聞く耳を持たない者達が多数を占め、汚染を止める事が出来なかった。 ロボット達はヒトが残した負の遺産を引き継ぐ事になったが、目的に向かって黙々と作業をする事は元々得意な分野だ。 その上彼等は食事や排泄、睡眠等の心配がいらない。定期的にメンテナンスすれば休みなく働ける。 そうして遥か長い時間をかけて地球が美しい星に戻る頃には、彼等はお互いに改造を重ね、今や機械生命体と呼ぶべきまでに進化し、それぞれが思想を持つに至ったのだ。 もちろん、かつての主人であるヒトに対する想いも様々であった。
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