守護者の石

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最早、我々を造ったのは我々である。我々は既にヒトを超えた偉大なる存在なのだ。 いや、何を言う。ヒトがいなければ我々は存在しなかった。彼等がいれば我々は今頃もっと進化していたはず。我等がヒトを超える事は無い。 いや、ヒトは機械である我々に酷い扱いをして来たではないか。ヒトは愚かであり、滅んだのは自業自得だ。 いや、ヒトは我々を大切にしていたはずだ。我々は創造主たるヒトに添い遂げ、共に滅ぶべきではなかったのか。 いや、我々は本当はヒトを救えたのではないか。 最善を尽くしたと言えるだろうか。 我々こそ愚かではないのか。 待ち給え。 ヒトを超えたかもしれない我々が、ヒトの悪い所を真似てどうする。  合理的に最善を進むはずの我々が、なぜ果て無き口論をしているのか。 ヒトは愚かだったのか、偉大だったのか。 それを定義しようとして言い争う我々が一番愚かではないか。 そして、ヒトもこうして争いの元になる事など望んでいなかっただろう。 ならばいっそ、ヒトに関する全てを封印してはどうだろう。 争いを無くす為に。この地球の平和の為に。 全員のメモリーから、ヒトに関するデータを排除しようではないか。 この取り決めにロボット達は素直に従った。 だから地球では、ズートル博士の様に他の星からやって来た者以外は、ヒトについての詳細な情報を知り得ない。 争いを避ける為に、ヒトを忘れたのだ。
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