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ずっと隣でお互いを見てきた。恋人なのかまだ幼なじみの延長か、彼女が俺にどれくらいの恋愛感情を持ってくれたのかわからないけど、その真っ直ぐな気持ちは本物だと思えた。 『俺も、好き』  湧き上がる歩への気持ちが溢れて止められなかった。七歳の年の差とたった三センチの身長差を、俺は一気に飛び越えて彼女にキスをした。歩はびっくりした顔だったけど、俺がもう一度キスをすると唇で(こた)えてくれた。 花火の音より自分の鼓動の方が大きく聞こえて、震える手で歩を抱きしめた。 『あ』 『どうしたの』 『焼きそば、食べた後だった』  どうせならかき氷とかジュースとか、口の中を爽やかにしてからにすればよかった。俺が思ってることが伝わったのか、歩はくすくす笑った。 『大丈夫。あたしも食べたし。暗いから青のりもわかんないよ』 『でも、レモンとかの方がよかった』  ふふっと笑って歩も俺を抱きしめた。こもった体温の中に、ふわりと彼女からいい匂いがする。 『夏くんの気持ち、嬉しかったよ』  慰められたのは子ども扱いだなって思ったけど、必死のキスを受け止めてもらえて、ちょっと大人になった気分でもあった。 『…ちゃんと、夏くんの味がした』 『え?』  俺の味ってどんなだよって思ったけど、宵闇の中でも(うつむ)いた彼女の頬が染まっているのが見えて、俺もそれ以上聞けなくなった。それから俺たちはまた手を繋いで花火を見続けた。 どうやって家まで帰ったか覚えてない。空腹も喉の渇きも気にならなかった。自分の部屋で彼女とのことを反芻して、枕を抱えてごろごろと悶えていたのは記憶にある。 残りの夏休みも何度か歩と会ったけど、なかなかあの夜みたいなロマンティックな雰囲気は訪れない。付き合う話や新しい約束は出てこなくて少し残念だったけど、歩はいつもの笑顔だったから俺もそれほど気にはならなかった。
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