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「ルナ、だいぶ待たせたな」
彼女は、はっとした。
そして、まるで飼い主を出迎えた犬のように、顔を上気させると満面に笑みを浮かべた。
こういう場面は、もう何度も目にしてきたが、本当にうんざりする。
この調子だと、彼のいない天国でも永遠に寂しさを訴え続けるかもしれない。
「今日はどうだった?」
彼が、彼女のかばんを覗き込むようにした。
ほら、といって彼女が紙幣の詰め込まれた茶封筒を手渡すと、彼は人目をはばからず中身を数え始めた。
「……これだけ?」
彼女の頬がこわばる。「え……? でも十万あるよ?」
彼は芝居がかった、ゆっくりとした深いため息をついた。
「あのな」
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