alone

9/15
前へ
/15ページ
次へ
「ルナ、だいぶ待たせたな」  彼女は、はっとした。  そして、まるで飼い主を出迎えた犬のように、顔を上気させると満面に笑みを浮かべた。  こういう場面は、もう何度も目にしてきたが、本当にうんざりする。  この調子だと、彼のいない天国でも永遠に寂しさを訴え続けるかもしれない。 「今日はどうだった?」  彼が、彼女のかばんを覗き込むようにした。  ほら、といって彼女が紙幣の詰め込まれた茶封筒を手渡すと、彼は人目をはばからず中身を数え始めた。 「……これだけ?」  彼女の頬がこわばる。「え……? でも十万あるよ?」  彼は芝居がかった、ゆっくりとした深いため息をついた。 「あのな」
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加