2.響の正体

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響のトレーナーは普通にデカすぎた。 これ1枚でもミニワンピとして着れるほど丈が長い。 袖に至っては、3回くらい折り返さないと手が出ない。 ハーフパンツも、すこぶるデカいけど、この際なんでもいいやとウエストの紐をギュウギュウに締めた。 髪を乾かしてリビングに戻ると…響がキッチンでコーヒーを飲みながら携帯をいじっていた。 「もう起きたの?お風呂、入らせてもらった。ありがとね」 ゆっくり顔を向けてきた響。 なんだか…難しい顔をしてる。 「…どうか…したの?」 聞いてみると、まさかの事実を告げられる。 「いま、連絡をもらった。…おじさんの会社、不渡りを出したそうだ」 「…ふ、不渡り?」 「あぁ…。経営にはずいぶん苦戦しているみたいだったけど、まさかこんなに早く…」 「…あのさぁ…響」 迷いつつ名前を呼んでみると「…あ?」と眉間にシワを寄せた怖い顔を向けてきた。 この顔に言うのは勇気いる… 「ふ、不渡りってなに?」 「は?お前本当に大学行ってるのか?」 呆れ返った顔でそういうわれるとホント…お恥ずかしい…。 「まぁ要するに…信用がなくなって、倒産の危機に陥いる可能性が出てきた、ということだ」 「え…?!…お父さん、仕事が無くなるってこと?そんな…弟の大学はどうなるの?この夏休み、どこにも遊びに行かないで予備校に通ってたのに…」 自分が働いて収入を得るまで、まだ半年もある。 その間、必死にバイトしても…生活の足しにはなるとしても…とても弟の受験費用まで賄えない。 「お母さんだって、これ以上無理ってほど働いてるんだよ?まずいよ。うち…どうなっちゃうの…」 不安が押し寄せて、冷静でいられない私に、響がとても冷静に言った。 「1つだけ、おじさんの会社を潰さない方法がある。琴音の家族が助かる方法が」 思わず響の切れ長二重をじっと覗き込んでしまう。
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