2.響の正体

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「…俺と、結婚前提に同居すること」 そうか…ここで、響の希望を聞けば… 「わかるだろ?俺は武者小路グループの跡取りだ。系列会社の取締役には必ず就任する。そして…グループの会長に一番近いのも…俺だ」 とんでもない大物が、幼なじみだったってことだ…。 そして何故か、私はその超大物に求められてる。 だったら…私の選択肢って…1つしかない。 でも…いいのかな。 「響、優菜ちゃん…覚えてる?」 「なんだよいきなり…」 私との同居をさっさとまとめたいらしい響。 話を変えられて、ちょっとイラついた様子。 「…よく川に遊びに行って、響の後をついてきた優菜ちゃん。確か同じ学校だったよね?」 「…あぁ。覚えてるも何も…今でも連絡来るから」 あぁ…やっぱり、そうなのか。 「…私、優菜ちゃんに、響と遊んじゃだめって言われてたんだよね」 「…はぁ?子供の頃の話だろ」 「ううん。うちが引っ越す直前にも…響と会わないで…って言われた」 響は、少し驚いたみたい。 「でも響には可愛がってもらったし、引っ越すこと伝えたかったから行ったんだけど…」 話を続けようとして…ちょっと、顔が赤くなる。 「あ、あの時、抱きしめられて…それを優菜ちゃん、見てたみたい。それで、引っ越した後にも連絡が来て…」 「…ちょっと待て。優菜は、お前の引越し先を知ってたのか?」 「うん、そう…だけど?」 ため息をついて…響はソファの背もたれに深く寄りかかった。 「…俺がどれだけ琴音を探したか…。優菜にも聞いた。その後も、お前の行方については事あるごとに聞いてたのに…あいつ隠してやがったのか…!」 空間を睨むような目つきの響…めっちゃ怖い…。 怖いけど…すごい事実も聞いた気がする。 「…響、そんなに探してたの?私のこと」 「当たり前だ。俺はお前のことがずっと好きだったんだよ。暇さえあれば探してた」 赤くなる必要もないほどきっぱり言うね… 「だからお前を帰さないんだよ。10年だぞ?やっと会えたお前を…逃がしてたまるかって話だ」 突然捕獲され…要塞に閉じ込められた意味が…わかりました…。 「それより、優菜に言われたことを気にして、俺と同居に踏み切れないって言ってるわけ?」 「…そ、それもあるけど、再会したばかりでいきなり同居とか結婚とか…おかしいよ」 しかもこんなイケメンに成長した響と、同居って。いろいろ心臓がもたない…。 響、うつむく私の顎をいきなり掬って自分に向かせた。 美しい顔が間近に迫る… イケメン…って…思った以上に破壊力ヤバい… 「お前を探していたのは10年だけど、好きになったのは初めて会った時だ。ちびっこいお前が可愛くて心配で…気づくといつもお前を見てた。会えない時はお前のことを思ってた。そんな一途な俺だぞ?何を迷うことがある?」 そんなに前から思われていたことを知って、あまりにもストレートな告白に…さすがに赤くなる。 「カフェで見つけた時は心臓が止まるかと思った。1週間張り込んで、笑顔で働いてる姿を見て、間違いなく琴音だって確信してんのに…お前はまったく気付かないってどういうことだ?…あぁ?!」 …あれ、いつの間にか告白が説教に変わってる…。 「…優菜に言われたことはすぐに忘れろ。家のことも、俺がなんとかしてやるから、琴音は黙って俺に従え」 …出た!俺さま響の決まり文句…! 「…なんだよ?今すぐ『ハイ』って言わないと、シメ殺すぞ?こら…!」 笑いながら首を絞めてくるけど…人前でやったら確実に通報案件…! コチョコチョくすぐられて…もうギブアップ…! 「…わかった!…わかったってば…!」 やっとやめてくれたけど…『でも…』と続ける私にまた怒りの視線… 「同居とか結婚とか…お母さんに聞いてみないとわかんない…」 …思いっきりコケられてしまった。
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