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カフェのバイト禁止令が出て、その他のバイトもダメだと言われた私は考えた。
ここはやっぱり、家事をしようと。
響との生活は、基本私が何かしなければならない、ということはなかった。
家事一切は専門のスタッフが定期的に来てやってくれるし、食事もプロのシェフが来て、作り置きしてくれる。
日々の買い物も必要な日用品も、自動的にしかるべき場所にストックされていく。
だから…夕飯はシェフの作り置きをレンチンするだけ…という手軽さ。
…なんだけど。
「…あのさ?食事代って毎月いくらかかってるの?」
食事は、響が家にいれば、一緒に食べている私たち。
ある日の夕食時、響に聞いてみた。
「…2〜30万ぐらいだろな」
「…えぇっ!」
「なんだよ…うるせぇな」
オマールエビ、とかいうでっかいエビが信じられないほど美味しいタレに絡んで、ご飯がすすんじゃう一品を突きながら言った。
「…も、もったいなくない?これから私…作ろうか?あと、掃除とか洗濯も」
カフェのバイトを辞めろと言われると、本当に稼げなくなる。
それなりに働かないと…響に頼りづらい。
「…お前、料理できるのか?」
「できるよ!こんなすごい食材は使えないけど…チャーハンとか煮物とか、ハンバーグとか!」
「他の家事も?」
「できるって!洗濯は洗濯機だし、掃除だって掃除機でしょ?あとは棚を拭いたり…」
「ここに掃除機は常備していない。クリーンスタッフが運び込んで掃除をしていく。あと…洗濯機は海外の特別なものだから、琴音には使えないだろうな」
確かに…洗面脱衣室に、やたら大きくて、ボタンがいっぱいの機械がある。
…なんじゃこりゃ…って思ったっけ。
「まぁそこまで言うなら、琴音には俺の書斎と寝室を掃除してもらうかな」
あと食事も…と、響は上機嫌になった。
「どうせアレだろ。バイト全部辞めたから、俺から金をもらうために家政婦みたいなことをしたいってことだろ?」
「そりゃそうだよ。それに…私一人増えてそんなに食費が高くなったなら…普通に申し訳ない…」
下を向く私の頭にポンっと大きい手が乗せられて「そういうとこが可愛い…!」なんて言われる…。
「家政婦というより、花嫁修業だと思ってやれば?」
彫刻みたいに美しい顔が近づいてきたので
…これはキスされる流れだと読んだ私。
またチュウチュウと唇が腫れるようなキスは、頭がボーっとするからやめてもらいたい…!
そんなキス阻止しようと、響のすべらかな頬に、私から…触れるだけのキスをした。
「…え」
…なんと、響が固まった!
ヤバ…っ反撃されるっ
「ごちそうさま…」と言って席を立ち、響の次のアクションから、逃げるようにテーブルを離れた。
けど…
響はそのままの姿で、キスされた頬に手を当ててる…。
どゆこと…?
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