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……………
そんなに遅くないと思っていたのに、気づくと響から、着信があり得ないほど入っていた。
留守電…聞くのも怖い…。
そのまま急いで帰ろうと、駅の改札を抜けようとしたところで着信がきた。
「…も、もしもし」
「どこでなにやってる?腹減ったぞ?」
…へ?
「…今日送別会って言ったじゃん」
「飯を作らないとは言ってないだろ?」
…あ、これ…お仕置きだ。
「…わかった。買い物して急いで帰るから、お風呂入って待ってて」
飲み会って言ったんだから、遅くなるに決まってるし、どこかで食べてきてくれればいいのに…。
響は私が大学からまっすぐ帰ってこないと、すごく変な意地悪をすることがある。
今日の夕飯作りも多分その一種。
だけど…
最寄り駅に着いてみたら…そこに立つ背の高い超イケメン。
「腹減ったから…今すぐ琴音を食べたい」
なんて、いきなりアダルト発言。
「…ちゃんと作るからダメ。私なんか食べても美味しくないよ」
そういう意味じゃねーんだよな…と言いながら、響はパンツのポケットに手を入れた。
その腕に、私の腕を絡ませるように言われて、響に引っ張られるように歩く。
ふと見上げて響の顔を見て、玲にキスをされた事を思い出した。
何となく落ち着かなくて、目を泳がせるように下に向ける。
「…なんかあったか?」
そんな私の変化に、響は鋭く気づいたらしい。
「玲が…」
言えばもしかしたら…面倒なことになるかもしれないのに…
言わずにはいられなかった。
「急にキスしてきて…」
…響の足が止まった。
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