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……………
夕飯はコンビニのお弁当に変わった。
「…ダメだよ。こんなの響に食べさせられない!」
そう言ったのにガンとして聞かない響。
帰宅してバスルームに追い立てられ、その間に完食したようだ。
続いて響もシャワーをした後、いつもならダラダラ過ごすリビングでのひとときをすっ飛ばし、私の手を掴んで引っ張っていくのは…寝室。
多分、玲とキスした発言をした私への、お仕置きが待っていると思われる…。
「…今日は、この変な布、取ってもいいか?」
広すぎるLDKと、個室が2部屋の響のマンション。
必然的に寝室のキングサイズのベッドで一緒に寝ることになって…そこは幼なじみという信頼感で妥協していた。
…とは言っても、実は頭と足元の壁にロープを取り付け、そこに使っていないシーツをかけてベッドを半分に分けていた。
簡易的なカーテンで仕切ってるみたいなもの。
はじめ、響は嫌がったけれど、私が泣きそうにしたら仕方なく承諾してくれたという経緯がある。
今日はその…布を取って寝たいと言うのだ。
寝姿を見るのも見られるのも嫌だ…。
でも…
「抱きしめて寝るだけ。絶対、それ以上のことはしない」
いつもみたいなオラオラ要素が限りなくゼロの響なんてレアで…何か思うところがあるのだろうと、首をたてに振ってしまった。
それなのに…響は嘘つき。
仰向けに寝る私を横向きで抱きしめて…
「琴音…?」
「…なに?」
呼ばれたから横を向いたのに、次の瞬間にはキスが落ちてきた。
少しずつ響の方を向かされて、キスはどんどん深くなった…
「琴音…愛してる…」
なんて切なそうに言われて、舌を絡め取られてしまえば…私も何だかボーっとして、キスをしてる唇に全部の神経が集まったような感覚…
しかも…
向かい合ったお腹のあたりに、硬い何かを感じる…。
これってもしかして…
私は慌てて唇を離して言った。
「あ…あの、私、そういう経験ないから、きっとつまんないと思う。だから…だから…」
だから…この先のことはできない。
もしくは、誰か他の人として…?
…いやいや!ちがうっ
「お前、バージンか?」
改めて言われると恥ずかしい…!
「…そ、そう。だから、響はきっとつまんないよ。私なんにも知らないもん」
「キスは?」
上半身を起こして聞いてくるほど重要なことか?
でも、その真剣なまなざしに押されて本当のことを言ってしまった。
「…響が、初めて…」
「…っ!」
…響、脱力したように、ゴロンと仰向けになった。
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