6.事件の予感

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6.事件の予感

それからの私は…大学が終わると響のマンションに帰るだけの日々で、自然と時間を持て余すようになった。 エントランスのコンシェルジュの方にも顔を覚えられて、おかえりなさい…なんて言葉をかけてもらえるまでにはなった。 響に突然捕獲されてから1ヶ月余り。 あのタイミングで奇跡の再会をしていなかったら、私たち一家は2度めの夜逃げを余儀なくされていたかもしれない。 「…あ、お母さん?琴音だけど」 パートから帰宅した頃を見計らって電話をしてみた。 母によると、父や弟も元気にしてるとのこと。父の仕事も弟の受験勉強も何とかなっていることが知らされた。 「…それよりさぁ、あんたあんまり無理にいろいろ持ってこなくていいよ?」 「…え」 急に言われて返事に詰まった。 「美味しそうなお肉とか魚とかさ…あれ、すごく高級なやつでしょ?」 聞くと、何度かクール便で宅配されたという。 響…? そんなことまでしてくれてたの? いや…忙しい響がそこまではさすがに…。 お礼を言われて曖昧に笑ってごまかし、私は母との電話を切った。 そして気になって、ちょっと久しぶりのあいつに電話をしてみた。 「…うちにクール便でなんか送ってくれた?」 「…あは…!バレた?」 電話した相手は真莉ちゃんだった。 飲みに行った時、うちの事情を話したから。 倒産の危機に陥っていて、母も必死にパートを頑張っているってこと。 結局倒産は響によって助けられたけど、母の過酷なパート生活は続いてる。 …真莉ちゃんって、たまにこういうことをする。 「…幼なじみだしさ。おばさんたちには可愛がってもらったし、気が向いたから送っただけよ」 中学の頃、塾が一緒で…帰りにお母さんが真莉ちゃんにもおにぎり渡したり、お父さんが唐揚げを持たせたりしてた。 うちのアパートの先を曲がったところにある大きな一軒家。 真莉ちゃんの家は両親とも仕事をしてて、すごく忙しかったから、小学生の妹といつも2人だったのを覚えている。 「…すごくいいお肉だって言ってたよ?せっかくのバイト代なくなっちゃうじゃん」 それに自分の名前で送ればいいのに、わざわざ私の名前で送るなんて… …あしながおじさんか?! 「まぁ…な。でも、俺からだと気を使うだろ?琴音からなら…気にせず食べられると思ってさ」 ホントいい奴…。 これで彼女がいないなんておかしいだろ。 まぁ…真莉ちゃんが「とりあえず付き合う」精神の持ち主じゃないというだけで、半径10メートルには必ず目をハートにさせた女子を引き連れてるから、あとは本人次第なんだよね。 「ほんとに…ありがとう。食べ終わった頃、実は真莉ちゃんからだったって伝えとく…!」 いちいち言うな〜…!と言う言葉を聞きながら、近くご飯に行く約束をして電話を切った。
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