6.事件の予感

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…………………… バイトがなくなって、響との約束通り、部屋の掃除をすることにした。 寝室は毎日寝てる部屋だし、クローゼットに服を取りに行かされたりして全部開けたことかあるから、楽勝。 でも…書斎に入るのは初めてだ。 「…失礼、します…」 プライベートな空間に勝手に立ち入ってる感覚 …なんか落ち着かない。 部屋は10畳くらいのフローリング、 大きなデスクが、窓を背に配置してあって……「役員室」的な雰囲気が漂う。 コの字型のソファとテーブル。 そして壁一面の本棚には、ずらりと難しすぎてよくわからない本が並んでる。 そんな本棚の一角に、縁なしの写真立てを見つけた。 近寄って見てみると…古い写真。 「…え?うそ…これ」 1枚だけじゃない。何枚も、同じような写真立てに入れられてる… 驚いた…子供の頃の私だ…。 お母さんに着せられた紺色のワンピースを覚えてる…。 夏休み…どこかに出かけたけど、大人たちの話ばかりでつまらなくて、帰宅してすぐ…お母さんに捕まる前に外へ飛び出した… 確か、小学4年生…。 あの時の記憶が蘇った。 私の後をついてきた弟と公園で遊んでいると、そこに何人か集まってきて、その中に…響がいた。 写真は…ブランコを立ち漕ぎしてる姿。 あの時、カメラとか携帯を持ってたのか、記憶はない…。 でも、きっと持ってたんだよね。 「懐かし…」 写真立てを手にして、思わず顔がほころぶ。 すべての写真は…私を中心に撮られていることに気づいて、響が本当にこの頃から私を思ってくれていたことを実感した。 …その中に、私より全然可愛い女の子が写っているのを発見した。 子供ながら、スラっとしてて、目鼻立ちが大きくて…これ、優菜ちゃんだ。 まるで写真を撮ってる響を見てるみたいな角度で、横に映り込んでて、目線が響に向いてることもわかる。 「…そういえば、今も連絡取ってるって言ってたなぁ…」 写真立てを戻しかけて…手にしていたホコリ取り用の布で丁寧に拭く…。 私の子供の頃の写真を、こんな風に飾って手元に置いてくれてるのが、あの響だなんて。 嬉しいような恥ずかしいような、甘酸っぱい感じ…! デスクに移動すると、わりとゴチャゴチャものが置いてあって、勝手に触らないほうがいい…と判断。 パソコンのモニターとキーボード、そしてノートパソコンの表面のホコリを取るため拭いた。 …ノートパソコンを開いてみたのは、その画面とキーボードも掃除しようと思ったからだ。 「…うわっ!!」 自動的に電源が入る設定なのか、その画面に現れた画像を見て心臓が止まるかと思った…。 「…い、今の…私?」 慌てて閉じたのを、ゆっくり開けてみる。 …やっぱり私だ…。 結構アップな寝顔は、伏せた目元のまつげの1本1本まで映し出されてる。 そして…唇が妙にテカってて…色っぽい。 コレって…キスされた直後…? いったいいつの間に…?と、頭を抱える…それになんでこんな画像をパソコンの待ち受けにしてる? まさか…携帯の待ち受けも私には内緒の1枚になってたりして…
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