6.事件の予感

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………… 「了解…っと」 響から、今日は帰宅が遅くなる…とメッセージが来た。 それなら…ということで、さっき電話で話した真莉ちゃんに再び連絡してみる。 「あー。いーよー」 と返事が来て、真莉ちゃんとご飯に行くことになったと響に伝えようか迷って…やめた。 遅くなるって言ってたし、ご飯いらないし。 問題なしと判断して、着ていたTシャツにイージーパンツ、マウンテンパーカーという軽装でマンションを出た。 ………………… 「真莉ちゃん、武者小路グループに属して、響の手下になっちゃうんだね…」 「なにそれどーゆー妄想?」 真莉ちゃんが入社予定なのは、武者小路グループ1位の総合商社。 「そういえば真莉ちゃんのお父さんって有名な料理人なんだよね?いくつもレストラン経営してるんじゃなかった?」 「は?かんけーないし」 確かに関係ないけど、就職の話をしてたから思い出しただけで。 「いや…お父さんの会社、継がないのかなぁ…って思って…」 そのへんはすべて母からの情報だ。 レストラン経営がうまくいって、その味の良さも相まって急成長して、今では料理人を育てる専門学校まで運営するようになったとか。 「…継がない。なに琴音…今さらそんなことに興味が湧いてきたの?」 眉間にシワを寄せて嫌そうに言う真莉ちゃん。 「別にそうじゃないけど、せっかくお父さんの仕事上手くいってるのに…ってさ」 ふん…と鼻を鳴らして、真莉ちゃんは不機嫌を隠そうとしない。 「琴音は俺が社長の息子とか気にしないから友達付き合いしてきたのに。そういうこと言うようになったんなら、他の女と一緒だな?」 「…別に気にしてないよ?でも…うちの弟だってお父さんの会社が続いてたら跡を継ぎたいって言ってたから、男の子はそう思うものなのかな…思っただけじゃん?!」 …お父さんの話になると、いまだに感情的になる真莉ちゃん… でも、中1で近所に引っ越して、見てきたから何となくわかる。 真莉ちゃんちは、両親とも仕事をしていて、いつも大きな家に妹と2人だった。 だから、台風のときとか怖くないか心配で、訪ねたこともあったなぁ。 両親の話になるとわりと機嫌を悪くするところを見ると、寂しかった子供の頃を思い出して、辛くなるからかもしれない。 2人で無言で少しお酒を煽りあって…「ごめん…」と言ったのは、ほぼ同時だった。
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