1.捕獲…?

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「…でも良かったぁ…また会えて!」 元気で良かった…という意味だったんだけど…響は、その完璧な顔面を優しく崩して言う。 「…俺は、良かったどころじゃない」 見つめる目が、妙に熱い気がするのは気のせいだよね? 走り出した車の乗り心地にキャーキャー言っている間に、どうやら目的地に着いたよう。 響に言われて車を降りると、そこはそびえ立つ大きなマンション…。 専用なのか…駐車場内にすでにエレベーターが待っている…。 停まっている車は3台。 「俺の車だけ残して、あとは持っていって」 響にそう言われ、車のドアを開けてくれたスーツ姿の男性が1台に乗り込み、駐車場を出ていった。 …と、いうことは、ここにあった車は全部響の…? 唖然とする私の背中をそっと押しながら、響は私をエレベーターに乗せた。 こんなに音もなく、スーッと上昇していくエレベーターなんて初めてかも…。 「や…ねぇ…響…」 耳を押さえて思わず見上げる。 「…なんだよ。エロいな」 「…っ?!」 高いところに上がっていくと…耳がツーンと詰まる感じ。 昔からそんな感覚が苦手だった。 何かあればすぐ響に訴えていたあの頃と同じ感覚で…向かい合う響を見上げる。 大きな手が私の両耳を塞いで、指先がくすぐるように耳穴に挿し込まれた。 「…ちょっ!なんか…」 首をかしげて小刻みに揺れる指先に抵抗しながら、その手を押さえた。 「…耳弱そ」 楽しそうな響… 久々に会って、こういういじり方…やめて? 不意に開いたエレベーター。 その先に広がる光景に驚いて一歩前に踏み出すと…私の耳は無事解放された。
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