1.捕獲…?

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「…うわ…何これ…」 一面の大きな窓…暗くなってきた外の風景が見えて、色とりどりの光がゆらゆら揺れているのがわかる。 「東京中が見えるんじゃないの?」 部屋をぐるりと囲む大きな窓に近寄って、夢中でその景色に見とれていたら、部屋の明かりが落とされたなんて気づかなかった。 そのうち、響が不自然なほど近寄って来る。 「お前を今日ここに連れてきたのは、特別な話があるからだ」 スルッと私の背後に回った響。 昔は響の顎の下に私の頭がつくくらいだったけど、今はどのくらいだろう。 「ねぇねぇ響…?」 振り向こうとした私を制するように… あの頃は流石になかった感覚が体に伝わる。 後ろからたくましい腕が肩とウエストに絡みついて、こめかみのあたりに柔らかい感触…。 「琴音…会いたかった…」 「…私も。あ、あの…」 「…ん?」 低音が甘い…。 さすがの私もドキドキするけど…相手はあの響。どうせ『なんちゃって?』とか言うに決まってる。 「部屋の明かり、消してくれてありがと。おかげで夜景がよく見えるよ…」 「…はぁ?」 ギュウっと抱きしめていた腕の力がふと緩んだ。 その隙をついてフッと腕から逃れ、広い部屋を見渡して、足を前に出そうとした時 「…危なっ」 暗がりで見えなかった。足元に置物があったみたい。 とっさに前のめりになる私を抱きとめた響。 びっくりした…と言いながら、腕の中で見上げると、響の瞳が暗くてもわかるほど揺れている。 「あの、ありがと…」 声をかけると…腕の力が緩み、2人の間に隙間が生まれた。 「…あ〜あ。やっぱお前には効かねえか」 響はそう言いながら、指をパチンと鳴らし、ソファにもたれるように腰掛けた。 ふわぁっと部屋が明るくなって、驚いて響の腕をバンバン叩く。 「なんか…明るくなった?!パチンって指鳴らしたから?ねぇねぇすごいねぇ!」 響は、若干呆れたみたいに言う。 「うるせぇうるせぇ。この部屋には最新のハイテク機能が備わってるってだけだ…」  「そうなんだ。やっぱ響んちってスゴイんだね?」 あたりをキョロキョロ見渡しながら、隣に座った私にさらに吐かれる深いため息…。 「…私には効かないって何が?」 「俺が身につけた男の色気が、お前には通用しないってこと」 「…っ!?」 ………… 響と初めて会ったのは、私が6歳。響が11歳の時。 春休みや夏休みは、よく近くの公園で弟と遊んでて、そこに学校の友達や幼なじみがまざってきた。 響も近所に住んでる男の子だったけど、小学校は一緒じゃなかったし、いつの間にか変わった色の制服を着るようになってた。 『…お前ら、また川に行く気だろ』 夏休みはよく少し先に流れている川に行くことが多くて、響はまるで大人の付き添いみたいについてきてくれた。 だいたい私と手を繋いで川に入ってくれて…もう一つの手で私の弟の手を握ってくれたっけ…。 …………… …離れて座ったのに、突然響の手に捕まった。
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