1.捕獲…?

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思い出したことがわかるみたいに手を握られて、その大きさに感動する。 「大きくなった響の手だぁ…!」 「琴音は変わらない…」 この手を最後に握ったのは、響が高校1年生の時。 不思議なことに…会いたいと思って響の家の前に行くと、だいたい出てきてくれたっけ。 確かあの日もそうだった。 『引っ越すことになったんだぁ』 『…何処へ?』 『わかんないけど、アパートに引っ越すんだって』 それだけしか言ってないのに、響には真相がわかったみたい。 すっと手を取られて、建物の陰に引っ張られた。 そして…今より華奢だけど、あの頃の私よりずっとしっかりした胸に、私を閉じ込めたんだ。 すごくドキっとして…「…なに…?」って小さい声で聞くと、少しだけ腕の力が緩んで… 覗き込む響に見られた私の顔は、きっと真っ赤だったと思う。 『…なんちゃって…?』 響はそう言って笑いながら、私の手を握った。 それが、なんだか恥ずかしくて…。 何も言わないで走って帰ったのは、明日もまた、会えると思ってたから。 …それなのに、その夜。 お父さんが怖い顔で引っ越しすると言って、家から私たちを追い立てた。 大きな車に身の回りの物を積み込んで、私はお母さんと弟と、先に車に乗り込んだ。 …あれから、10年…。 どうやら奇跡の再会を果たしたらしい。 …にしては、あの頃の延長みたいな私たち。 緊張感もなく、響は『近所のカッコいいお兄ちゃん』のまま、今も隣に座ってる。 「…あのカフェ、一週間前に初めて行ったんだよ。そしたら見たことあるちびっこいのがいて、驚いた」 「ちびっこいって私のこと?」 「あれからお前、身長伸びなかっただろ?」 「失礼すぎっ!10センチも伸びたっ!」 「へぇ…俺、13センチ伸びた。今188」 勝ったと言わんばかりの顔。 なんでかわかんないけど、繋いでた手を離して、パシッと腕を叩く。 「…なんでだよ…?」 響も笑っちゃって、その顔があの頃と同じで…すごく嬉しくなった。
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