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「はい! 今日はここまで。各自、自主練して来るように!」
「はい!」
顧問の先生がそこで声をかけ、稽古は終了になり、それぞれ皆帰ることになった。
「ありがとうございました!」
部員達は挨拶をして真凛も帰ろうと歩き出した。何故か真凛はその時、ぼんやりしていた。
「真凛、危ない!」
「え?」
誰かが叫んだ次の瞬間、真凛は舞台の階段を踏み外してしまう。
「きゃっ……」
「先輩!」
近くにいた真の声が聞こえたと同時に、真凛は血の気が引いていく感覚を覚え、気がつくと気を失っていた。
* * *
「……ん?」
「お嬢様!」
――え? お嬢様? 誰のこと?
「お嬢様、いい加減起きて下さい!」
間違いなく真凛に向かって言っている。うっすら瞼を開けると、真凛は見たこともない部屋にいた。
どこかの映画で見たことがある、中世ヨーロッパに出て来そうな部屋。真凛は天蓋付きのベッドに寝ている。
「え? どこ、ここ?」
「……お嬢様?」
「あ、あなたは誰?」
「お嬢様? 記憶喪失ですか?」
目の前にいるのはメイド服を着た、外国人の女性。20歳前後と言った所だろうか。心配そうな眼差しで、真凛の顔をのぞき込んでくる。
ふと、ベッドの脇に立てかけられている鏡を見るとそこに映るのは、ブロンズの髪に彫りの深い美しい女の子がいた。
「え? 噓でしょ……何これ?!」
真凛は鏡に映る自分の姿を信じられずにいた。
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