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マリアとエドワーズ
「熱は……なさそうですね。頭を打ったりしてませんか? 寝ている時に。失礼ですがお嬢様、あまり寝相が良くありませんので……」
真凛の額に手を当てたメイドは、考え込んでいる。
「医者を呼びましょう」
「え? 大丈夫よ」
「私の名前が分かりますか?」
「えっと……」
「……やはり、呼びますね、恐らく記憶喪失のようです」
眉間にシワを寄せた彼女はそのまま部屋を出て行った。
別人の体に真凛の意識がある。
――これってまさか……異世界転移?
真凛は頭を横に振り、何が起きているのか考えた。
――確か私、演劇部の帰りに階段から落ちそうになって……柏木くんに名前を呼ばれて助けられた? 気がついたらここに……。
「あ! 柏木くんは?」
真凛は思わず口に出してしまう。
――柏木くんは現代にいるのかな?
それとも、柏木くんもこの世界に?
控えめにノックをする音が響くと、メイドが入って来た。
彼女の姿を見ると突然頭の中に記憶が流れ込んでくる。彼女の名前が脳裏に浮かんだ。
「ミミ……」
微かに目を見開いた彼女は、少しだけ安心したようだ。
「マリアお嬢様……」
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