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「たく……「ばーか、なんもしねーよ」
起き上がった匠はあたしにデコピンをしてゲラゲラと笑っている。
「匠のバカ」
「なに、本当にされると思った?」
あたしの唇に自分の人差し指を当てる。
「……っ、思ってないよ」
「あれ?顔、赤いよ?」
完全に全てわかってる。分かっててやっているのがわかるから怒りがフツフツと沸いてくる。
「匠のせいでしょ!?」
「ふーん、ドキドキしちゃったんだ?」
「……したよ」
ドキドキしたくなんてないのに。したよ。
「……っ」
あたしの返答に目を見開く。
「する?」
「バカ!するわけないでしょ!」
大人びた匠はあの頃より数倍かっこよくなっていて、当時からかっこよくてモテてたけど更に磨きがかかっていた。
きっといまも女の子にモテていて、いままで彼氏のできたことのないあたしとは全く違う人生を歩んできたんだろうなっておもう。
「ムカつく」
「なにが?」
あたしの言葉に首を傾げる。
あの頃は匠と柊くんの近くにいた女の子はあたしだけだったのに、いつの間にか他の子の方が知ってるんだろうなと思うと少し胸がチクリと痛む。
14年も経っているんだし、そんなの当たり前なのに。他の人よりあたしのほうが知らないのが当たり前だ。
14年もあれば外見も環境もなにもかもがかわる。あたしが引っ越してしまったんだから仕方ないって分かってる。
でも知ってたかったって思うのはわがままなのだろうか。
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